8年は経ったかな,2001年の,ロスの大きなホテルの前の交差点.片道3,4車線ほどもあった.信号で止まる車のフロントガラスを拭く事でチップをもらっている青年がいた.
拭いてもチップがもらえるとは限らないが,それも気にせず,かといって一所懸命という風でもなく.なんだか適当に楽しそうにしていた.カメラを向けて撮ってもいいかと聞くと"Sure!'と笑顔が.
それがきっかけで,私もこのコーナーで彼と話しながらあっちこっちにレンズを向けていた.
青年は,信号が赤になると仕事,青になると私の相手.腹が空かないか?って聞くので,私は『そこそこ』と応えた,すると彼は,通りかかったビジネスマン風のお兄さんに早口で何か言った.その人は手に下げていたピザの箱を,笑顔と一緒にポンとよこした.中には半分ほど残ったピザが.アメリカサイズのピザは大きい.直径は5,60cmはあるだろうから,半分と言っても日本では数人分の量.
二人して冷めかけたピザをおいしくいただいた.食べながら,いろいろ話をした.青年は今は住む家がないという.ホームレス.数学が好きだった,解の公式を今でも覚えてるとも.
窓を金網でおおわれたバスが横切っていったときに,あのバスに乗ったことがあると言った.??という顔をしていたら,あれは囚人を運ぶバスだと教えてくれた.こそ泥のようなつまらない事をしたこともあったとそのときに話してくれた.
タバコを持っているかと聞くので,差し出すと一本抜き取り,通る人にまた声をかけた.すると使い捨てライターがポンと手渡され,それで火をつけた.私も一緒に一服した.(私はタバコは持っていたがライターはオイル切れだった)どうだ,ちょろいだろ!みたいな得意げな笑顔.
時間はあっというまに2時間も経っていた.そろそろホテルに戻ると告げて,残ってたタバコを箱ごとやると言ったら,それじゃいらないという.理由を聞くと母の教えで『Never rob everything. (決して全てを奪うな.)』
私は一本だけ抜き取り耳にかけた.これならどうだ,といったら笑顔で受けとった.
写真はこのときの青年,ダッセル君.2001.06撮影
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